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2013年5月 2日 (木)

日本を襲う!リバース・イノベーションの破壊

前号で、日本の不調の原因としてビジネス変化の加速について述べた。今回、別の視点でこれを考えてみたい。

◆何かがおかしい

先進国が軒並み不況で、財政赤字。日本の財政赤字は1000兆円近くと天文学的に膨らんでいる。

他方、新興国に目をやると、中国、インド、ブラジルなど、好景気で急成長している国が目立つ。これまで我々は、彼らは先進国の模倣と下請けで栄えているのだろうと考えてきた。もし、そうなら、不公平な話だ。

それにしても彼らの成長は経済学的にみて大きすぎる。では、「シュンペーターの経済成長の理論」、すなわち、彼らに何かイノベーションがあったというのだろうか。

ここで、一昔前を思い起こしてみると、日本が奇跡の成長を遂げた時期があった。そのとき日本は、欧米諸国から模倣とダンピングだとの批判を受けた。しかし、その後、日本に、TQMなど独自の品質管理や持続的イノベーションがあったことが評価された。その日本は世界第二の経済大国に上り詰めた。

では、中国、インドなどはどうなのか。これだけの成長が続くからには、何らかのイノベーションがあるはずだ。

◆新興国の頭脳が生む「リバース・イノベーション」

米ダートマス大学のVijay Govindarajanは、彼らは模倣だけではない。彼ら独自のイノベーションを起こしていると指摘し、それを「リバース・イノベーション」と名付けた。

参照 『リバース・イノベーション』 ビジャイ・ゴビンダラジャン著、クリス・トリンブル著、小林 喜一郎(解説)、 渡部 典子訳 ダイヤモンド社 (2012/9/28)

従来、先進国企業は、その製品に部分的モデルチェンジを施して新興国の低い所得に合わせ、低価格、低機能化した製品を販売した。しかし、この先進国の目論見の多くは失敗した。

失敗の原因は、先進国で開発した製品は、いくら安く販売しようとしても、新興国の大多数の購買層に合わなかったからだ。結局、それはごく一部の、富裕層向きの商品でしかなかったのだ。

そこで、新興国側は、その大多数の購買層のニーズに合った製品づくりを行うようになった。それは、先進国製品の無駄な機能や装飾を取り払うという単なる引き算だけではなかった。製品機能の本質を捕え直し、一から新たに設計し直すということから始まった。それは、格段に低価格、シンプルで使いやすい機能を実現するものだった。
このシンプルな製品は、新興国で大ヒットしただけに留まらなかった。その中には、先進国のニーズを満たす製品も現れたのだ。そして、それが逆輸入され、圧倒的低価格で、先進国の製品を駆逐することさえ起こった。

◆日本の家電メーカーの深刻な脅威

例えば、 操作しやすいマイコン式単機能電子レンジ。中国企業のこのシンプルな製品は、日本製品の世界のマーケットを奪っている。
中国の家電メーカー海爾(ハイアール)は、世界で飛躍的な発展を実現し、世界市場における地位を高めており、世界の産業界から注目されている。その急速な発展ペースはすでに日本国内市場も脅かしており、日本の家電メーカーの深刻な脅威となっている。

このように、新興国で開発した製品がその市場を制覇し、先進国の市場にも逆進出するケースが増えている。その手法を、米ダートマス大学のVijay Govindarajanは、リバース・イノベーションと呼んだのだ。リバースとは、逆戻り=逆流という意味だ。
その言葉の通り、リバース・イノベーションは、従来の先進国→新興国という流れと、まさに逆であり、先進国企業や市場にも時に大きな破壊を生み出す。

◆リバース・イノベーションから我々が考えるべき重要なこと

その一つは、先進国側の先入観を改めることである。これまで、新興国の強みは、豊富で安い労働力にある、と考えてきた。しかし、今や、新興国は先進国の下請け生産を脱しつつあり、先進国にひけをとらない頭脳集団が生まれてきているのだ。

もう一つ、それは、先進国の製品開発が、その本質を見失いがちになっていたことである。
市場競争の激化と情報伝達産業の技術革新の同時化により、ビジネス変化のスピード(クロックスピード)が一挙に加速したことで、製品開発の本質を見失いがちになり、製品開発競争が、フリル争いになっていたという側面がある。フリルとは、付属の機能や複雑化など過度のモデルチェンジであり、それがコストの上昇や、使いにくさに繋がっていた。

この先進国の「先入観」と「開発の欠点」をついたのが新興国のリバース・イノベーションだということもできる。

リバース・イノベーションの本質は、先進国側では、常識として誰も疑わなかったことに、新興国側が疑問を持ち、これをもとに一から製品開発を行うものだと言えよう。

先進国側が、新興国のこうした動きは、感知していたとしても、先進国側には打つ手がなかった。それは、共食い(Cannibalization)を恐れたからだ。もし、先進国側が、自らこうしたリバース・イノベーションに対処した製品を出せば、それが、自己の製品と競合し共食い(Cannibalization)になると恐れたからである。
そして、先進国企業が手をこまねいているうちに、新興国のリバース・イノベーションにしてやられることになったのである。

このままでは、新興国がイノベーションを起こし、先進国の市場を奪取するという逆流と破壊が続くことになる。先進国側は、このリバース・イノベーションの破壊にどう対処するべきなのか。

日本にとってリバース・イノベーションの破壊は深刻である。シャープ、パナソニック、ソニーなど、多くの家電メーカーが苦境にあるのは、新興国のリバース・イノベーションの破壊力のためなのである。

日本が打つべき対策について、次号で考えたい。

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