無料ブログはココログ

« 2013年4月 | トップページ | 2013年6月 »

2013年5月

2013年5月27日 (月)

もう一度シュムペーターの原点から考え直したい

◆家電メーカーの大赤字決算に考える

家電各社の決算はあまりに酷い。

その各社は押し並べて、低価格の汎用品では、もう韓国、中国といった新興国に太刀打ちできない。だから、差別化された高機能の製品で、ハイエンドのマーケットをねらうということのようである。新興国の追い上げに対しては、ハイエンドのマーケットに活路を見いだす他ないという考え方である。

しかし、この考え方は、1990年以来の失われた20年の間、ずっと聞かされてきたものだ。各社はこれまでも、ずっとハイエンドのマーケットをねらってきたはずだ。それなのに、今日の苦境を招いてしまった。

ここで、シュムペーターが書いた『資本主義社会主義民主主義』第2章の資本主義は生き延びうるかの項の次の文が気にかかってならない。

「資本主義の業績は、典型的には、エリザベス女王たちのためにいっそう多くの絹靴下を用意することではなく、必量労働量をつねに減ずる代償として絹靴下を女工たちの手の届くところにもたらすことにあるのである。」

参照 シュムペーター著『資本主義・社会主義・民主主義(上)』中山伊知郎/東畑精一訳 東洋経済新報社(1962年4月)p124

日本の家電メーカーは、真逆ではないか。本当に残された道は、ハイエンドのマーケットしかないのだろうか。

無抵抗にローエンドのマーケットを新興国企業に明け渡すというやり方は考え直す必要があると思う。まず、途上国の真のニーズをとらえることが重要である。これまで、我々は、途上国というと、安い労働力と、潜在的なマーケットばかりに注目してきた。途上国の「頭脳」と「知力」を軽視し、これらに注意を払うことが少なすぎたように思う。そのしっぺ返しが、新興国企業の逆襲であった。

上から目線で、途上国、新興国を考えるこれまでのやり方は一変させるべきだ。これからは、途上国、新興国諸国の頭脳と知力を取り込み活用するという考え方に転換することが必要である。

◆この21世紀は途上国の「頭脳」と「知力」の取り込みが重要だ

この21世紀は、途上国の「頭脳」と「知力」をいかに取り込めるかにかかっている。それによって、真の途上国のニーズを把握することも可能になろう。

米国の経済学者クリステンセンは、かってその著書の中で、優良企業は、ハイエンドのマーケットに固執し、新興企業のローエンド破壊を許すことで、やがて敗退するというパターンをイノベーションのジレンマと呼んだ。日本の家電メーカーは、結局、このイノベーションのジレンマに陥っているのである。

参照 クレイトン・クリステンセン著 伊豆原弓訳 翔泳社(2001年7月)p205

日本の家電メーカーは、新興国企業のローエンド破壊に無抵抗なままでなく、ローエンドのマーケット向きの技術革新と製品開発への意欲を取り戻すことが必要だと考える。その第一歩は、途上国の頭脳と知力を取り込むことだ。

◆原点回帰だ

資本主義の原点としてのイノベーションの理念を、もう一度シュムペーターに学び、その原点から考えたい。

貧困で買えない人も買えるようにする
使えない人が使えるようにする
働けない人が働けるようにする

この発想で日本は変わらなければならない。

2013年5月10日 (金)

どうする日本!まるで絵に描いたような家電メーカーの敗北

◆加速する変化に弱い日本経済

前号のようにビジネス変化の加速が日本経済を蝕んでいる。
技術革新と市場競争が同時化し、しかも国際化したことで、かってないほど変化が激しくなった。

日本企業が目論んできた、漸進的な改善活動で市場競争で優位を維持するという戦略は、通用しなくなった。それは戦後日本を経済大国に押し上げた戦略の失効を意味する。

基礎研究から立ち上げてイノベーションに繋げようとする科学技術創造立国の目論見も、加速する変化には、対応しきれない。

日本経済は、じっくり時間をかけた変革には優れた力を発揮する。しかし、加速する変化には弱い日本である。

◆世界のイノベーションにヒントを求める

では世界のイノベーション事情はどうなっているのか。
このところ、米国発のイノベーションばかりが目立っていたが、ちょっと事情が変わってきたようだ。
あいかわらず、世界のイノベーション企業ランキングでは米国が優位にあるものの、アジア企業の上昇が目立ってきた。

その中で注目されているのがインド式イノベーションである。

それは、「ジュカード・イノベーション」と呼ばれている。
とにかく速いことがメリットだ。
ジュガードとは、ヒンズー語で「応急措置」のことであり、ものや資源などの制約があっても、知恵を絞ってなんとか問題を解決する、という意味らしい。

有名な例が、タタ・モーターズの「タタ・ナノ」である。インドの一般の低所得層にも手を届く価格(25万程度)で購入できるという驚きの車を量産した。とても実現不可能といわれたものを、成し遂げてしまった、「ジュカード・イノベーション」の代表例である。

参照  Wikipediaのタタ・ナノの稿

そして、このイノベーションの「ジュガード精神」というのが、今、シリコンバレーでも話題になっているという。シリコンバレーというのは、イノベーションのメッカという程、革新的アイデアの宝庫である。近年のイノベーションはシリコンバレー発ばかりが目立つ。
ここで、インドのジュガード精神に関心が集まっているということは、シリコンバレーも曲り角に立ったといえよう。

◆日本もジュガード精神に学びたい

その1 Seek opportunity in adversity
その2 Do more with less
その3 Think and act flexibly
その4 Keep it simple
その5 Include the margin
その6 Follow your hear

参照 http://jugaadinnovation.com/
2013.5.9閲覧

これらが、現代の競争の激しい不安定な環境下で企業が革新し成長するのに必要な要素として注目されているのである。何か、日本が戦後の焼け野原から、奇跡の復興を遂げた頃の精神と似ているような気がする。日本は初心に戻って出直すべしということではないか。

◆気になるシュンペーターの言葉

もう一つ気になることがある。それは、かつてシュンペーターが、述べていたという次の言葉である。
「女王エリザベス一世は絹の靴下を持っていた。一般に、資本家の功績というのは、女王にもっと絹の靴下を供給することではなく、それを女子工員たちの手が届く場所に ― 着実に労力を減らした見返りとして ― 持ち込んだことにある。資本家のやりかたは、偶然ではなく機械の恩恵によって、
少しずつ大衆の生活の水準を引き上げる。」
参照 著者英エコノミスト編集部『2050年の世界』p311文糞春秋(2012.8)

シャープやソニーなど、日本の家電メーカー各社は、エリザベス女王(ハイエンド)にもっと絹の靴下(高品質テレビ)を提供しようとした。女子工員たち(ローエンド即ち、新興国の低所得層)に恩恵をもたらすという、資本家のやり方を忘れていた。それが、今日の苦境の要因のように思える。
これに対して、シュンペーターの言葉に適っていたのはサムスンだ。新興国向けの低価格テレビを開発し、その市場を押さえるという戦略で力をつけ、今や、先進国の市場にも進出が急である。

2013年5月 2日 (木)

日本を襲う!リバース・イノベーションの破壊

前号で、日本の不調の原因としてビジネス変化の加速について述べた。今回、別の視点でこれを考えてみたい。

◆何かがおかしい

先進国が軒並み不況で、財政赤字。日本の財政赤字は1000兆円近くと天文学的に膨らんでいる。

他方、新興国に目をやると、中国、インド、ブラジルなど、好景気で急成長している国が目立つ。これまで我々は、彼らは先進国の模倣と下請けで栄えているのだろうと考えてきた。もし、そうなら、不公平な話だ。

それにしても彼らの成長は経済学的にみて大きすぎる。では、「シュンペーターの経済成長の理論」、すなわち、彼らに何かイノベーションがあったというのだろうか。

ここで、一昔前を思い起こしてみると、日本が奇跡の成長を遂げた時期があった。そのとき日本は、欧米諸国から模倣とダンピングだとの批判を受けた。しかし、その後、日本に、TQMなど独自の品質管理や持続的イノベーションがあったことが評価された。その日本は世界第二の経済大国に上り詰めた。

では、中国、インドなどはどうなのか。これだけの成長が続くからには、何らかのイノベーションがあるはずだ。

◆新興国の頭脳が生む「リバース・イノベーション」

米ダートマス大学のVijay Govindarajanは、彼らは模倣だけではない。彼ら独自のイノベーションを起こしていると指摘し、それを「リバース・イノベーション」と名付けた。

参照 『リバース・イノベーション』 ビジャイ・ゴビンダラジャン著、クリス・トリンブル著、小林 喜一郎(解説)、 渡部 典子訳 ダイヤモンド社 (2012/9/28)

従来、先進国企業は、その製品に部分的モデルチェンジを施して新興国の低い所得に合わせ、低価格、低機能化した製品を販売した。しかし、この先進国の目論見の多くは失敗した。

失敗の原因は、先進国で開発した製品は、いくら安く販売しようとしても、新興国の大多数の購買層に合わなかったからだ。結局、それはごく一部の、富裕層向きの商品でしかなかったのだ。

そこで、新興国側は、その大多数の購買層のニーズに合った製品づくりを行うようになった。それは、先進国製品の無駄な機能や装飾を取り払うという単なる引き算だけではなかった。製品機能の本質を捕え直し、一から新たに設計し直すということから始まった。それは、格段に低価格、シンプルで使いやすい機能を実現するものだった。
このシンプルな製品は、新興国で大ヒットしただけに留まらなかった。その中には、先進国のニーズを満たす製品も現れたのだ。そして、それが逆輸入され、圧倒的低価格で、先進国の製品を駆逐することさえ起こった。

◆日本の家電メーカーの深刻な脅威

例えば、 操作しやすいマイコン式単機能電子レンジ。中国企業のこのシンプルな製品は、日本製品の世界のマーケットを奪っている。
中国の家電メーカー海爾(ハイアール)は、世界で飛躍的な発展を実現し、世界市場における地位を高めており、世界の産業界から注目されている。その急速な発展ペースはすでに日本国内市場も脅かしており、日本の家電メーカーの深刻な脅威となっている。

このように、新興国で開発した製品がその市場を制覇し、先進国の市場にも逆進出するケースが増えている。その手法を、米ダートマス大学のVijay Govindarajanは、リバース・イノベーションと呼んだのだ。リバースとは、逆戻り=逆流という意味だ。
その言葉の通り、リバース・イノベーションは、従来の先進国→新興国という流れと、まさに逆であり、先進国企業や市場にも時に大きな破壊を生み出す。

◆リバース・イノベーションから我々が考えるべき重要なこと

その一つは、先進国側の先入観を改めることである。これまで、新興国の強みは、豊富で安い労働力にある、と考えてきた。しかし、今や、新興国は先進国の下請け生産を脱しつつあり、先進国にひけをとらない頭脳集団が生まれてきているのだ。

もう一つ、それは、先進国の製品開発が、その本質を見失いがちになっていたことである。
市場競争の激化と情報伝達産業の技術革新の同時化により、ビジネス変化のスピード(クロックスピード)が一挙に加速したことで、製品開発の本質を見失いがちになり、製品開発競争が、フリル争いになっていたという側面がある。フリルとは、付属の機能や複雑化など過度のモデルチェンジであり、それがコストの上昇や、使いにくさに繋がっていた。

この先進国の「先入観」と「開発の欠点」をついたのが新興国のリバース・イノベーションだということもできる。

リバース・イノベーションの本質は、先進国側では、常識として誰も疑わなかったことに、新興国側が疑問を持ち、これをもとに一から製品開発を行うものだと言えよう。

先進国側が、新興国のこうした動きは、感知していたとしても、先進国側には打つ手がなかった。それは、共食い(Cannibalization)を恐れたからだ。もし、先進国側が、自らこうしたリバース・イノベーションに対処した製品を出せば、それが、自己の製品と競合し共食い(Cannibalization)になると恐れたからである。
そして、先進国企業が手をこまねいているうちに、新興国のリバース・イノベーションにしてやられることになったのである。

このままでは、新興国がイノベーションを起こし、先進国の市場を奪取するという逆流と破壊が続くことになる。先進国側は、このリバース・イノベーションの破壊にどう対処するべきなのか。

日本にとってリバース・イノベーションの破壊は深刻である。シャープ、パナソニック、ソニーなど、多くの家電メーカーが苦境にあるのは、新興国のリバース・イノベーションの破壊力のためなのである。

日本が打つべき対策について、次号で考えたい。

« 2013年4月 | トップページ | 2013年6月 »