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2012年12月 3日 (月)

イノベーション亡国に向かう日本/どうする日本(その十五)

◆イノベーション亡国に向かう日本の現状(前回に詳述)をまとめてみよう。

・海外に学ぶものがなくなり、基礎研究からの独自イノベーションが必要になったことは日本経済に大きな負担となっている。基礎研究が独自イノベーションに繋がる確率は大変低い。
・クロックスピードの加速で頻繁にビジネス変化が求められることで、企業は絶えずイノベーションに備えなければならなくなった。これは、イノベーションとそれに続くコントロール型マネジメントの重要度を高るめものでもある。
・日本が得意としている改善型マネジメントの期間が短縮化し、改善型マネジメントの比重が低下した。これは改善型マネジメントで高い技術を誇ってきた日本にとって不利である。
・国内の生産コストの高さと円高から、国内企業は生産の海外移転を強いられている。生産のコントロールのみでなく、改善も海外まかせになりつつある。国内は空洞化し、イノベーションに成功しても雇用増加が期待できない。
・日本からの技術移転で力をつけたアジア諸国の追い上げにあい、国際競争が激化。
・日本企業が海外で上げた利益は、国内に投資対象やビジネスチャンスが少ないため国内に還流してこない。
・蓄積された知財(産業財産権)を活用して利益を上げるという目論見があるが、ロイヤリティなどの利益を得ても国内雇用が生まれない。
・日本は高度な技術を用いた製品やサービスのみ国内で実施し、それを輸出すればいいという考え方があるが、国際的には過剰性能、高価格となり受け入れられていない。高度な技術だけを自国内で実施し輸出すればいいというのは割に合わない。ガラパゴス化もいわれている。

 こうしたことは日本ばかりでなく、先進イノベーション国家に共通のことであるが、イノベーション国家は損な役回りをしていることがわかる。
イノベーションは苦痛と多大なコストで成し遂げられるものだ。そのイノベーションの利益が、国内に十分回らず国外に逃げ出してしまうのだ。国内には、格差、歪、雇用喪失が残り、また企業は絶えず次のイノベーションに備えることが負担になる。この不合理は、グローバリズムとイノベーションの組み合わせから生じる必然だ。

画期的新技術とイノベーションの推進で、いつか先進イノベーション国家が日の目を見るというのは楽観論に過ぎる。グローバリズムの中では、イノベーションの果実は海外に移転してしまい、ますます苦境になるというのがイノベーション先進国家なのだ。

上記したイノベーション国家のジレンマとともに、日本が置かれた危機的状況を列挙してみよう。

◆技術立国日本の危機的状況

①科学技術の革新だけでは解決困難な難問山積
 (第2章で詳述)

②イノベーションの成果が外に逃げていく
不確実性の高い革新技術に注力し、確実となった技術は外へ出ていくという構図。

③技術やサービスのガラパゴス化 
 国内でしか通用しない独自、高機能な製品開発
 日本は高度な技術を用いた製品やサービスのみ国内で実施し、それを輸出すればいいという考え方の帰結
 ガラパゴス化は、技術やサービスなどが日本市場で独自の進化を遂げて世界標準から掛け離れてしまう現象のことである。技術的には世界の最先端をいきながら国際的には、ほとんど普及していない製品が沢山ある。日本の携帯電話、カーナビなどである。
――ウイキベディア 『ガラパゴス化』の項参照

④日本が本来得意とした製品化力の衰退―ビジネス変化の加速で日本を世界第二の経済大国に押し上げた改善型マネジメントの比重が相対的低下した
――C.ファイン クロックスピード
参照 ファイン、チャールズ・H 『サプライチェーン・デザイン』日経BP社(一九九九)
 
⑤基礎研究の負担増とイノベーション未達成
――産学官連携ジャーナル Vol.2 No.3 2006
――OECD 政策フォーカス1999年6月 OECD Tokyo Centre. 科学技術の進歩を促進する

⑥若者の理工系離れ
――「理工系離れ」が経済力を奪う (日経プレミアシリーズ) [新書] 今野 浩 (著) 出版社: 日本経済新聞出版社 (2009/04) ISBN-10: 453226040X

⑦国内労働人口の減少
――(出所)総務省「労働力調査」、厚生労働省「雇用政策研究会報告書」
――マクロ経済分析レポート
労働力人口の減少により国内の専門職は大幅に減少 発表日:2008年6月9日(月)~国内人材の更なる活用と海外の高度人材の取り込みで人的資本の確保を~
第一生命経済研究所 経済調査部

⑧イノベーションの基礎となる「思考する教育」が遅れている
欧米キヤッチアップの時代に必要とされた「覚える力」だが、もう独自に新しいものを考えださなければならない時代だ。そのために、覚える教育から、思考する教育に転換しなければならない。ところが日本の教育は、覚えるが7、思考するが3だという。これを逆転することが必要だ。これではイノベーション時代に必要な「思考力」ある人材が育たない。
――(孫正義のテレビ発言 2010.8.30 東京TⅤ 教育論 「日本は覚える7で思考3だ。これを逆転させなければならない。アメリカでは、ずっと前から思考中心の教育だ」

⑨少子高齢化の人口減少で内需減少
――(出所)厚生労働省「人口動態統計」、内閣府「高齢社会白書」
人口減少ショック―社会が変わる内需が変わる 古田 隆彦 (著), 西武百貨店IDFプロジェクト室(著) 出版社: PHP研究所 (1993/09)
 人口減時代における消費市場の変化、それに伴うマーケティング戦略の方向性など、いかにしても内需は減少せざるを得ない。

⑪国内企業が海外で稼いだ資金の還流がない
 内需がなくて、投資対象がないから、資金は海外に滞留する。

⑫国内企業の海外移転が進む
――空洞化

⑬頭脳の海外流出
――アジア諸国に国内のシニアエンジニア流出

⑭技術移転し力をつけた途上国の追い上げ
――中国 韓国 マレーシア シンガポール タイ 

◆簡略化すれば

科学技術創造立国をめざして、基礎研究に巨額の資金を投じてきた日本。しかし、日本のイノベーションはうまくいっていない。それは長く低迷している現今の状況が証明している。科学技術は蓄積され、世界をリードする技術革新が多数なされている。その日本の技術革新は世界一の特許出願数に反映されている。それなのにイノベーションがうまくいかないのは、技術革新がイノベーションに結びついていないということになる。

まさに、いまの日本は、技術、経済、社会、国際関係と、まさにジレンマだらけ、お先真暗に見える。しかし、どこかに明るい未来への出口があるはずである。

以下、次回に続く。

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