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2011年6月

2011年6月13日 (月)

放射能予測データ非公表はもはや「事件」ではないか

◆政官業学の無責任体質が国民を被曝し傷害した

前回に続き、放射能予測システムSPEEDIの意味を考える。

前回、SPEEDIのデータ未公表について、思い付くことをブレーンストーミングの要領(1)で28項目のリストにした。今回、そのリストに、次のブレークスルー思考の手順を適用した。
(2)明らかな誤りの修正や削除→(3)類似性、概念の上下などで整理(KJ法の活用)→(4)整理したリストを元に仮説モデルを作成→(5)新しい意味の発見を目指す→(6)新しい意味に関連する情報を調査→(7)新しい意味についてのモデルを作成。

図1に、(4)の仮説モデル「SPEEDIのデータ未公表のBSモデル(1)」を示す。

(図をクリックすると拡大)

Image1_10

このモデルから、放射能予測システムSPEEDI未公表の意味として
1.国民の被害と損害は「事件」
2.安全神話にかまけた「危機感の欠如」
3.政/官/学の「無責任体質」
 関係性/責任の曖昧さ
4.公開「ルールの不備」
5.「政策的」未公表
を取り上げる。

図2は、これら1~5の関係性をモデル化した「SPEEDIのデータ未公表モデル(2)」である。(図をクリックすると拡大)

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ここでは、新しい意味として、1.の「国民の被害と損害は事件」に注目したい。

◆政官学の無責任体質

我が国では、過去に起こった様々な、政府、官僚組織、御用学者らがからむ事故や事件に関して、当事者はいつも過失を逃れようとし、結果的に刑事的責任を問われることはほとんどなかった。それは、政官学の責任の所在が曖昧で、互いにかばい合ったり、責任のたらい回しが行われるからである。

このように当事者がいつも過失を逃れることから、政府、官僚組織、御用学者による委員会や省庁の外郭団体などは、もたれ合い、馴れ合いの無責任体質を作り上げてきた。このことが、我が国の政治、行政の著しい劣化を招いたといって過言ではないだろう。

さて、今回のSPEEDIのデータ未公表について考えてみよう。

SPEEDIのデータ公表にかかわる当事者は、
原子力安全課(文部科学省)
原子力安全委員会(内閣府)
原子力保安院(経産省)
なお、実際にSPEEDIを運営するのは(財)原子力安全技術センターであるという。

◆「微弱でありただちに健康に害がない」は言い逃れ

今回のSPEEDIのデータ未公表について、当局は「微弱な線量でありただちに健康に害があるものではない」という言い逃れをしようとしている。また、官邸と三者の関係は、曖昧模糊として真実を掴むのに困難が伴う。

しかし、何も知らされなかったために、放射線がより高い津南町や飯館村に避難した人達が大勢いた。こうした人達は、身体的には放射線の害がまだ出ていないにしても、すでに精神的な大きなダメージを受けている。

また、前号で示した放射能の拡散予測を知らされず、3.15に首都圏で、無防備でいた人々がいる。彼らは、後から、その時放射線量がピークを示していたことを知り、やはり精神的な大きなダメージを受けている。

実際に、微量放射線の長期被曝の影響が身体に出るのは、5年~20年も先のことになるという。しかし、何の警戒行動もとれずに被曝したことに、すでに、精神的な大きなダメージを受けているのだ。

我々はこの精神的被害について、告発することができるのではないだろうか。特に、精神的なダメージがPTSDなど精神的な障害となったらなおさらである。

★参考情報
スティーブン・ベッカー米アラバマ大教授(災害心理学)「原発事故の問題は、実際の放射能被害よりも心理的な影響の方が大きいことだ。恐怖心がトラウマとなり、不安症や無気力、極端な悲観論者になったり、原因不明の肉体的な変調をきたしたりする。」
msn産経ニュース2011.4.7 08:52 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110407/amr11040708560001-n1.htm

この精神的ダメージの告発が、例え起訴につながらなかったとしても、当事者である官邸、原子力安全課(文部科学省)原子力安全委員会(内閣府)原子力保安院(経産省)に、緊張感を与えることができるだろう。
それは、我が国の宿悪といえる政府、官僚組織、御用学者による委員会、省庁の天下り外郭団体の、無責任体質に、一石を投じることになり、我が国の政治、行政の劣化を食い止めるきっかけになると思う。

そんな中で、最近イタリアで興味深い事件が起きた。

◆地震予知ミスで学者ら7人起訴 

309人が死亡、6万人以上が被災した2009年4月のイタリア中部地震で、最大被災地ラクイラの地裁予審判事は25日、同国防災庁付属の委員会が事前に大地震の兆候がないと判断したことが被害拡大につながったとして、過失致死傷の罪で委員会メンバーの学者ら7人を起訴した。

地震予知の失敗で刑事責任が問われるのは世界的にも異例とみられる。初公判は9月20日に開かれる。

検察側によると、専門家や防災庁幹部で構成される同委員会は、群発地震が続いていた中部の状況について、09年3月31日にラクイラで開いた会議の後、大地震に結び付く可能性は低いと報告。これに安心して避難しなかった多くの住民が6日後に起きた中部地震で死傷した。(共同通信2011.5.26)
参照 msn産経ニュース 2011.5.26 08:03
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110526/erp11052608040005-n1.htm

◆検察は事件性について真摯な判断を

以上の記事にあるように、地震予知では、その失敗で刑事責任が問われるのは、世界的にも異例とみられている。しかし、こと安全対策万全といわれてきた原発事故では状況が異なるだろう。万一に備えて周到に準備されてきた「放射能拡散予測データ未公表」に関しては、刑事責任が問えるのではないか。

「放射能拡散予測データ未公表」にかかわった、官邸、原発関連委員会の委員長、委員らに、業務上過失傷害の罪がないのか、地検は真剣に判断すべきだ。

2011年6月 4日 (土)

福島原発事故で我々は「虫けらみたいに」被曝させられた

◆放射能予測システムSPEEDIの意味を問う

福島原発のレベル7大事故で、我々は放射能に被曝した。
事態が明らかになるにつれて、人々は空気、水、土、食物の汚染に晒されていることを知り、放射能から逃れるすべを求めて右往左往している。

この現状を表わすのに、長崎原爆に自ら被曝しながら被爆者の治療を続けた医師秋月辰一郎の言葉が思い浮かんだ。それは「虫けら」である。以下に引用する。

「人びとは傷ついた虫けらのように逃げまどう」

「辛うじて生き残った人は、焼けあとの石ころのように、虫けらのように生きなければならなかった」

「・・・逃げまどう人間を圧する、人間が虫けらにひとしく見えた」

引用文献 秋月辰一郎著『長崎原爆記 被爆医師の証言』(平和文庫)(単行本 - 2010/12)

放射能に晒されている我々の存在は、まさに「虫けら」ではないか。

この理不尽さをどこに抗議したらよいのか。3.12から3.15まで、我々は正しい知識も的確な情報もなく、放射能に被曝した。それは、「飛んで火に入る夏の虫」状態だった。そこに危険な火(放射能)が迫っていることを知らされることなく、ある者は放射能が来ている方向に避難した。またある者は無防備なまま屋外に居続けた。

象徴的なのが、福島県の浪江町津島地区と、飯舘村に避難した人々である。津島地区と飯舘村が放射能が高い地区であることを知らされていなかったからである。近隣の20k圏内から、多くの人が圏外の津島地区と、飯舘村に避難してきたという。ところが、何とそこは、元の20k圏内よりも放射能汚染が高かったというのだ。
これでは、危険な火(放射能)を知らず飛び込んだ夏の虫ではないか。

東日本の多くの人々も、3.15に、放射能が迫っていることを知らされず、無防備なまま屋外に居続けた。知らされていたのは、福島原発事故と微量の放射能漏れがあったということだった。微量であり、100kも200kも離れた遠方のことであるからと、多くの人々は警戒行動をとらなかったのだ。

ところが3.15の原発事故の放射能は、東日本各地に飛来していた。福島以南のモニタリングの推移がそれを示している。
図郡山
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図北茨城
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図水戸
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図前橋 
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図宇都宮
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図新宿

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http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/houshasen/index.html 

各地の放射線量より

3.15に東日本の各地で放射線量が鋭いピークを付けている。もし、このピークの時、外出しないで屋内に退避するなどしていたら、私達は被曝を大幅に減らすことができたはずである。しかし、その時、私達は放射線が高まっていることを知らず警戒行動をとれなかったのだ。

◆悲劇を生んだ放射能予想のデータ未公表

実は、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)というネットワークシステムが構築されていた。しかし、なぜかそのSPEEDIの予測データは公表されていなかった。だから、国民は放射能予想データを知るすべがなく、ある者は放射能が高い方向に避難したり、放射能が迫っていたのに屋外で無防備でいたりしたのである。
もし、SPEEDIのデータが公表されていたら、放射能が低い方向への避難や、屋外退避の警戒行動がとれたはずであり、被曝を相当程度減らすことができたはずである。

◆SPEEDIとは何か

SPEEDIは、核事故などで大量の放射性物質が放出されたり、あるいは、そのおそれがあるという緊急時に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度や被ばく線量などを、迅速に予測するシステムであり、その予測は、放出源情報、気象条件および地形データをもとにして迅速に予測することができるという。

国・地方公共団体は、SPEEDIネットワークシステムが予測した情報により、周辺住民のための防護対策の検討を迅速に進めることができるとされている。

参照 文部科学省原子力安全課原子力防災ネットワーク
『環境防災Nネット』「SPEEDIの開発および運用の経緯」http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030105.html

つまりSPEEDIは、今回の原発事故のような放射性物質の放出に備えて開発されたものだった。

そのきっかけは、昭和54年3月に発生した米国スリーマイルアイランド原子力発電所の事故であり、昭和59年に基本システムが完成した。そして、昭和59年からネットワーク化のための調査が行われ、その翌年、昭和60年から福島県および佐賀県などを対象としたSPEEDIネットワークシステムの維持・運用が開始されたという。

その後ネットワークが拡張されて全国22ヶ所に整備されたオフサイトセンターとも接続され、予測精度の向上を図るために改良と更新が行われたという。
文部科学省原子力安全課原子力防災ネットワーク
参照 『環境防災Nネット』http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030105.html
「SPEEDIの開発および運用の経緯」
 
つまり、昭和60年から福島で運用が始まっており、その後、システムの改良とネットワーク化がなされてきた。それが、なんで今回の事故でそのデータが公開されなかったのか、きわめて不可解である。

『SPEEDI』には、20年以上の歳月と約113億円という巨額の費用がかけられているという。

◆事故から一か月半後にSPEEDIのデータ公表

このSPEEDIのデータが公表されたのは、事故から1ヶ月半経過した4/26であった。専門家や国民からの要望での公開であったが、後の祭りであって「放射能拡散予測」という目的は達成されなかった。後から「自分の住む地域には、このように放射能の影響があった」など知らされても何もならない。
我々は、放射能のことを知らずに「虫けら」のように被曝してしまったのだ。

SPEEDIに関係するのは、次の三者であるという。
原子力安全課(文部科学省)
原子力安全委員会(内閣府)
原子力保安院(経産省)
なお、実際にSPEEDIを運営するのは(財)原子力安全技術センターであるという。

◆SPEEDIのデータ未公表の「意味」を考える

SPEEDIのデータ未公表の、「原因」はどこにあるか、「責任」はどこにあるか、という問題については、すでにマスコミやネットで種々論じられている。しかし、これでは埒があかない。我が国では、多くの問題の「本質」が究明されずに、表層的・対症療法的解決で済まされてきた。もっと深いところにある本当の問題に辿り着くことなく、真の問題解決が棚上げされてきたのだ。だから今日のニッチモサッチモ行かない事態になっているのだ。

◆原因思考の限界

従来、我が国の論評は、何かの問題に直面すると、このように「原因は何か」「責任はどこにあるか」ということになっている。そのために、

現実を調査する→原因究明→責任追及→再発防止策を講じるという手順でことが進められてきた。(原因思考)

この思考法は、PDCA(計画・実施・チェック・アクト)という言葉で呼ばれる。まず、データーに基づいてプランを立て、それを実施し、結果をチェックし、改善活動を行なう。この改善活動の骨子は、問題の原因を見付けだし、その原因を取り除き、再び問題が発生しないようにする
というものである。
これは日本の高度成長を支えた継続改善型思考法である。

ところがここに大問題が生まれてきた。それは我々はこのPDCAサイクルにあまりに慣れすぎているということである。そのため、なにもデーターのない世界に飛びこみ、全くの新機軸を生みだすことができないのだ。それが、今日、我々が現状を打破(ブレークスルー)してイノベーションを起こすときの大きな障害になっている。失われた20年も基本的にこのことが原因している。

◆意味思考への転換

そこで、推奨されるのが、意味思考である。「問題の原因は何か」から、「問題の意味は何か」への転換である。
問題が発生したら、その意味は何かと自問自答し、さらに調査することである。
意味は、人や物やシステムのかかわり方(関係性)から、多種多様に生まれてくる。沢山の意味を考えていくと、物事の深層に迫ることができる。その中で、全く新しい意味を発見できたら、そこに現状突破ブレークスルーの機会があるはずである。

◆「意味」の探索方法

SPEEDIのデータ未公表について、思い付くことをブレーンストーミングの要領でどんどん書いていく。「当否」に拘わらずできるだけ多く書き出してみよう。以下進める。

(1)思い付くままに、事実、関連事項をできるだけ多く書きリストを作る。発想を加速させるため、ブレーンストーミング式に当否はあとまわしにする。。
(2)リストが出来あがってから、その中に明らかな誤りがあったら、修正や削除をする。
(3)出来あがったリストを、類似性、概念の上下などにより整理する。(KJ法の活用)
(4)整理したリストを元にして仮説モデルをつくる。
(5)これらの過程で、従来にない新しい意味の発見を目指す。
(6)新しい意味の発見があったら、関連する情報をとことん調査する。インターネットで公開されている省庁や外郭団体の資料、マスコミ報道、聞き取り調査などを進める。
(7)新しい意味に関するデータを元に、再び仮説モデルを作成する。このモデルから、ブレークスルーの機会を読みとる。

◆SPEEDIのデータ未公表についての発想事例(当否を問わず)

1.SPEEDIが震災で壊れて機能しなかったのでは
2.官邸の公表の指示がなかった
3.当初、官邸にSPEEDIのデータの存在が知らされていなかった 
4.官邸が国民がパニックになるのを恐れて公表を止めた
5.官邸が原発事故そのものを内外に過小に伝えたかった
6.SPEEDIのデータは公表を前提としていなかった
7.SPEEDIのデータは信頼できるものではなかった
8.原子力安全神話にあぐらをかき、危機管理を怠っていたため現実の原発事故にあたりSPEEDIの運用が混乱した
9.震災と原発事故で指揮命令系統が混乱していた
10.政権にとって不利だから公表しなかった
11.SPEEDIの開発は、官僚の天下り先の確保が第一目的でありその運用と公開は真剣に考えられてこなかった
12.官邸も官僚も原発事故を過小評価し、国民の被曝を重視していなかった
13.SPEEDIのデータを公開すれば、外国人観光客が来なくなる
14.政治主導をうたう管政権とこれに反発する官僚との冷たい関係が、SPEEDIの情報伝達と公開を妨げた
15.SPEEDIは、危機を想定した訓練が十分なされてこなかった
16.SPEEDIのデータを公開すれば、日本は放射能汚染国となり、農産品が輸出できなくなる
17.SPEEDIのデータ公開についてルールが定められていなかった
18.SPEEDIを運用する文部科学省、原子力安全委員会、経産省原子力保安院の三者の関係(権限と責任)が曖昧で、総竦みになった
19.「知らぬが仏」知らさぬのは為政者の愛である
20.原発事故について、内外に安心感を与えたかった
21.文部科学省と「原子力安全委員会」との省庁間の対立の構図が浮き彫りとなった
21.SPEEDIの保守整備の不備があった
22.SPEEDIは、原子力安全対策をPRするためのツールにすぎなかった
23.原発事故は姿を変えた戦争だ、国策優先だ
24.被曝した国民は、夏の虫状態だ
25.犯罪だ。国民の生命と健康を損なった犯罪だ
26.役に立たなかったSPEEDIは国費の無駄遣いだ
27.損害賠償だ。未公表は、国民に精神的苦痛を与え、被曝という傷害を与えた

以上は、(1)の、当否に拘わらず思い付くままにブレーンストーミング・ルールで書き綴ってみた27項目のリストである。このリストをもとに、上記(2)~(7)と整理を進めていきたい。

以下は、次のブログへ。

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